2024.7.19


真珠のネックレスのリモデルは、日本人女性の多くが身近なところに真珠のネックレスを一本は持っている、という肌感覚からスタートしました。成人の記念として、結婚の記念として、贈られたり受け継いだりしたネックレスをお持ちではないでしょうか。

けれども同時に、そこまで多くの人に行きわたるだけの真珠が生産されているのだろうか、という疑問もわいてきます。そこで、1956年(昭和31)から2023年(令和5)までの日本の真珠浜揚量と20歳女性人口の推移をグラフに表してみました。

 

農林水産省の漁業・養殖業生産統計には、魚、貝、海藻などと並んで、真珠の浜揚量が公表されており、1956年から現在までに2つのピークがあることがわかりました。

ひとつめのピークは1960年代。国の手厚い保護により真珠養殖技術はめざましく進歩し、真珠が大量生産されるようになりました。1967年(昭和42)には、現在の約10倍にあたる125トンの真珠が浜揚げされましたが、そのほとんどは海外へ輸出されています。

ふたつめのピークはバブル景気にわく1990年前後。当時は天然採苗による純国産母貝で真珠が養殖されており、年間浜揚量を同年の20歳女性人口で割ると70g/人以上。真珠の一連ネックレスの平均的な重さを30gとすれば、20歳女性一人あたりネックレス2本分の真珠が、1年間で浜揚げされていたことになります。
浜揚量のうち商品として出荷できる品質のものが1/3、そのうち1/2が輸出されていたとしても、当時は多くの日本人に行きわたるだけの真珠が生産されていたと考えてよさそうです。

 
それから30年。日本の真珠は減産が続き、その希少性は高まるばかりです。海の環境や真珠生産者の減少を鑑みれば、今後3つめのピークが訪れることはないでしょう。

眠っている真珠のネックレスはありませんか。真珠は冠婚葬祭だけのものではなくなりました。弔事に真珠のネックレスを着けなければならないという風潮もなくなり、留め具がシルバーである必要もないでしょう。

 
参考:
「真珠養殖をめぐる情勢について 」水産庁 2024年5月
「漁業・養殖業生産統計」農林水産省
「人口推計の統計データ」総務省
「全真連技術研究会会報」全国真珠養殖漁業協同組合連合会